タワーマンションの固定資産税見直しへ 2017年度税制改正

自民党の税制改正大綱が公表され、2017年度税制改正の内容が明らかとなりました。不動産投資に関連する改正事項の一つにタワーマンションの固定資産税等の見直しがあり、今後、高層階所有者の税負担が増加する見込みです。
今回は、タワーマンションの固定資産税の見直しについて、その概要や背景を解説します。なお、便宜上、固定資産税に焦点を当てていますが、都市計画税・不動産取得税も同様の考え方で改正されます。

区分所有マンションの固定資産税の計算方法

現行制度上、マンションを区分所有している場合、固定資産税は以下の方法で計算されます。

①マンション1棟の固定資産税を算出する

まず、マンション1棟全体にかかる固定資産税を計算します。固定資産税は土地と建物それぞれに課税され、それぞれの固定資産税評価額に税率(標準税率1.4%、市町村により異なります)を乗じた額になります。

②各部屋の床面積に応じて按分する

マンション1棟全体にかかる固定資産税が決定したら、それを各部屋の床面積に応じて按分し、部屋ごとの固定資産税を算出します。

例えば、固定資産税が100万円のマンションを、Aさん・Bさん・Cさんの3人が専有面積1:1:3の割合で区分所有しているとします。この場合、それぞれが負担する固定資産税の割合は面積の割合と同じになるため、固定資産税額は、Aさん:20万円、Bさん:20万円、Cさん:60万円となります。

各部屋の固定資産税額の決定に影響を及ぼすのは、原則として床面積の差違のみであることから、同じ床面積の部屋であれば、属する階層に関わらず固定資産税額は同額となります。上記の例の場合、Aさんが1階、Bさんが50階を所有していたとしても、固定資産税額はともに20万円となります。

 

タワーマンションの固定資産税に関する2017年度税制改正の概要

2017年度税制改正によって、タワーマンションの固定資産税は以下のように見直されることとなりました。なお、この税制が適用されるタワーマンションは「高さが60mを超える建築物のうち、複数の階に住戸が所在しているもの(居住用超高層建築物)」のことを指し、おおよそ地上20階以上のマンションがこれに該当します。

改正後の固定資産税額決定方法

税制改正後タワーマンションは、部屋の階層の差違によって固定資産税額が変動することになります。
具体的には、「階層別専有床面積補正率」を設定し、マンション全体にかかる固定資産税額を按分する際の床面積を階層に応じて補正することで、固定資産税額が調整されます。

階層別専有床面積補正率

階層別専有床面積補正率は、「最近の取引価格の傾向を踏まえ、1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値」とされています。
少し分かりにくいですが、各階層における具体的な階層別専有床面積補正率は、以下の式で概算することができます。

階層別専有床面積補正率(%)=(階層-1)×0.25641+100

これを計算すると、各階層の補正率は以下の値になります。

階層 階層別専有床面積補正率(%)
1 100
10 102.3077
20 104.8718
30 107.6923
40 110
50 112.5641

そして、タワーマンション全体の固定資産税を按分する際に、実際の床面積に補正率を乗じた値が、計算上の床面積として使用されます。例えば、40階にある床面積80㎡の部屋の場合、固定資産税を計算するにあたっては、80㎡×110%=88㎡とみなされることになります。

これ以降の計算フローは従来と変わらず、専有する床面積に応じてマンション全体の固定資産税を按分することになります。したがって、同じ床面積の部屋の場合、階層が上に行けば行くほど固定資産税は高くなり、40階の部屋では1階の部屋と比べて固定資産税が1割高くなります。

今回の改正では、タワーマンション全体にかかる固定資産税そのものは現行と変わらないため、高層階の所有者は税負担が増え、低層階の所有者は税負担が減ることになります。

ただし、これらの仕組みにかかわらず、タワーマンションの区分所有者全員による申出があった場合には、申し出た割合によって固定資産税額を按分することが可能です。

 

タワーマンション固定資産税の制度改正の背景

今回の制度改正の背景には、タワーマンションの階層による取引価格の差違があります。タワーマンションは、一般的に、階層が上に行くほど眺望や日当たり等などの理由から需要が高まり、低階層階の部屋に比べて取引価格が高くなる傾向があります。

しかし、従来の税制度では、固定資産税の計算において階層ごとの取引価格の差違が考慮されず、結果として、高層階の所有者ほど固定資産税の税額が相対的に低くなるという課題がありました。

今回の税制改正によって、このような課題が解消され、階層による取引価格の傾向を踏まえた形で固定資産税額が調整されることになったといえます。

 

タワーマンションの駆け込み需要が増える?

今回の税制改正の内容は、2018年度から新たに課税されることとなるタワーマンションについて適用されることになっています。したがって、それまでの間に所有したタワーマンションについては、現行の税制が適用されます。

つまり、あと1年ほどは、タワーマンションの高層階の部屋の固定資産税が相対的に低いというメリットが享受できるということであり、今後、高層階の部屋への駆け込み需要が高まる可能性があるといえます。

タワーマンションに投資を、と考えている場合には、早めに動き出しておいた方がいいかもしれません。

 

不動産投資は税制改正の内容をしっかりと把握しておくことが重要

不動産投資をするにあたって、税金の支出は見逃せません。固定資産税や都市計画税は毎年かかってくるものなので、1年にかかるのは数十万円の支出だとしても、積み重なれば大きな支出となります。税制改正の内容をしっかりと把握しておくことも、不動産投資においては必要であるといえるでしょう。

なお、本投稿の税務に関する記述は弊社独自の見解です。当該記述に基づく経済的損失等には一切責任を負いかねますことを、予めご了承ください。必要に応じて、税理士や行政の窓口にお問い合わせください。

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