信託受益権とは?信託受益権は担保に設定できるのか

資産の流動化に伴い、売買されるケースが増えた「信託受益権」ですが、まだまだ知らない方が多いのも現状です。また、信託受益権は財産権としての性質を有しているため、「信託受益権を担保に資金を借入できるのか」が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、信託受益権の概要と取り扱い、信託受益権を担保に設定することができるかどうかなど、様々な視点から解説していきます。

信託受益権とは

信託受益権とは、所有不動産を信託銀行等に委託した際に、委託者が得るその資産から発生する経済的利益(賃料収入など)の配当を受け取る権利のことです。近年、資産の流動化を図る流れが不動産業界に広がっており、不動産自体を売買するのではなく、不動産から生まれる権利である「信託受益権」を売買するケースが増えてきています。

本来の不動産取引では、所有権を売買することが一般的です。しかし、売買の都度所有権移転登記が必要になるため、手間もコストもかかってしまうのが難点となっています。

そこで、より手間もコストもかけずに売買と同様の効果を得るために活用されているのが、信託受益権です。信託受益権を売買する場合には、不動産そのものを取引するわけではないので、不動産取得税もかかりません。また、取引に必要となる手順も大幅に短縮可能となるメリットがあります。

このような背景から、不動産取引において信託受益権が利用されるケースが増加しています。信託受益権の仕組みを理解するために、不動産信託についても説明します。

不動産信託とは

不動産信託とは、不動産信託契約に基づき信託会社などに所有権を移転し、管理や処分を委託して生み出された収益を、信託会社などの報酬や必要経費を差し引いたうえで、委託者に還元する仕組みのことです。

不動産信託がなされると、不動産の所有権は委託者から受託者に移転します。同時に委託者は信託受益権を取得し、受益者となります。受託者は、受益者の指示に基づき不動産の管理や処分を行い、その管理や処分で生み出された収益から、必要経費および信託報酬を除いた金額を受益者へ支払います。

また、不動産の売買を信託するケースでは、売買金額から売買までの税金等の経費と信託報酬を除いた金額が受益者へ支払われることになります。このように、信託契約から生じる収益を受け取る権利を「信託受益権」となります。

信託受益権は担保に設定できる

先述したように信託受益権は、財産権としての性質を持っています。したがって、信託受益権を担保に設定し、資金を調達することも可能です。この場合、民法で規定されている担保物権のうち「質権」が設定されることになります。財産権を目的とする質権ですので、質権の中でも「権利質」といいます。

権利質は、動産を目的とする「動産質」や不動産を目的とする「不動産質」と異なり、質権者が目的物を占有する権利はありません。そして不動産質と異なり質権者が目的物を使用収益する権利もありません。

したがって、貸金の担保として信託受益権に質権を設定した場合でも、貸金の返済が継続している限り、質権設定者は引き続き信託受益権に基づく収益を受け取ることができます。

万が一、貸金の返済が不履行に陥ってしまった場合、質権者質権を実行し、信託受益権の収益を自身の債権の弁済を充てることができます。信託受益権からの弁済は、

・信託受益権に基づく信託会社などからの配当金
・信託受益権の売却代金

のいずれでも構いませんが、現実的には貸金の債権者が信託受益権者になることは考えにくく、信託受益権が売却されるケースが多いでしょう。

信託受益権に質権を設定する場合の注意点

信託受益権に質権を設定する際の注意点として、「不動産取引で多く利用される抵当権とは取り扱いが異なる」という点が挙げられます。

抵当権は、設定登記を公示方法としています。わかりやすくいえば、登記が無ければ第三者に対抗することができないということです。

信託受益権に質権を設定する際は、受託者の承諾が必要です。また、質権を第三者へ主張する場合には、確定日付(詳細は次章)を取った上で受託者への通知または承諾が必要となります。

この場合の受託者とは、信託を受託している者、つまり信託銀行や信託会社などが該当します。このように、抵当権と質権の取り扱いには違いがありますので、注意しておきましょう。

信託受益権を担保とする不動産担保ローンのスキーム

ここでは、信託受益権を担保として、不動産担保ローンを利用する際のスキーム例をご紹介しましょう。

信託受益権を担保に不動産担保ローンを利用する例

不動産事業者A社は、自社で所有していたビルを信託銀行へ信託し、信託受益権を持っています。今後の展開としてA社は、3,000万円を別事業に出資する予定になっているため、所有している信託受益権を担保に3,000万円の資金を調達したいと考えています。

このようなケースでは、A社の信託受益権に質権を設定した上で、金融機関から資金を調達する形になります。具体的な流れの一例は、下記のとおりです。

<信託受益権を担保に不動産担保ローンで資金調達する流れ>
1.A社と金融機関の両者で質件設定契約を締結
2.A社が公証役場で確定日付を取った上で、信託銀行の承諾を得る
3.A社と信託銀行間で「質権設定承諾依頼書兼設定承諾書」を取り交わす
4.用意した質権設定承諾依頼書兼設定承諾書を金融機関に交付する

信託受益権を担保に不動産担保ローンを利用する場合、一般的には公証役場で確定日付を取った上で受託者の承諾を得ることで、受託者及び第三者への対抗要件とします。

確定日付とは、文書に一定の手続きを踏んだ作成日時をつけることで、その文書が捺印された日付に存在することを証明するもので、一般的には公証役場での確定日付の付与や内容証明郵便が使用されます。

公証役場で確定日付を取る際は、作成者自身が出向かなくても問題はなく、代理人または使者による手続きも可能です。その際には、確定日付の付与を受けたい文書を持参すればよく、身分証明書や委任状等の書類は不要です。公証役場の業務受付時間は場所によって異なりますので、利用の際は事前に確認しておきましょう。

まとめ

不動産ファンドをはじめとしたプロ向けの案件を除いて、信託受益権を担保とする不動産担保ローンの事例は少ないものの、ケースに応じて融資を受けることも可能です。

しかし、不動産取引での担保は抵当権の設定が一般的であるため、質権との取り扱いの違いに注意しなければなりません。この記事のポイントをまとめると、

・信託受益権とは、「信託した所有物から生まれた収益を受け取る権利」
・信託受益権を担保にする際は質権が設定される
・信託受益権に質権を設定する取引の際は、受託者及び第三者対抗要件として確定日付を取った上で、受託者への通知または承諾が必要

という点です。信託受益権の要点を理解しつつ、スムーズな取引を実現しましょう。なお、不動産取引の税務に関する正確な情報につきましては、納税先の税務署、税理士等にご確認頂きますようお願い致します。

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