不動産を担保にすることで、低金利で大きな金額を借入できる「事業者向け不動産担保ローン」。中には、保証人を付けずに契約できる事業者向け不動産担保ローンも存在しており、「低金利で資金を確保したい」という事業者にとっては非常に強い味方だといえます。
しかしながら、「どんな審査が行われるのか?」「審査の注意点は?」などの疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、事業者向け不動産担保ローンの審査で重要となる四つのポイントと、審査を受ける上での注意点を解説します。
事業者向け不動産担保ローンの審査で重要な四つのポイント
事業者向け不動産担保ローンとは、文字通り不動産を担保に設定することによって、他のローンよりも通常低い金利で大きな資金を借入できる融資商品のことです。
事業者向け不動産担保ローンの貸付対象の多くは、法人もしくは個人事業主(※事業性のあるものに限る)となっています。事業者向け不動産担保ローンで借入した資金の使い道は原則自由で、多様な資金ニーズに対応することができます。
しかし当然ながら、事業者向け不動産担保ローンを利用するためには、あらかじめ定められた審査を通過する必要があります。事業者向け不動産担保ローンの審査で重要なポイントは、以下の四つです。
1.不動産の担保価値
2.信用情報
3.売上や資金繰りと借入のバランス
4.事業の安定性
それぞれの要点を解説していきましょう。
1.不動産の担保価値
不動産には、資産としての担保価値があります。この担保価値が高ければ高いほど、不動産を売却するときの価格も高くなります。つまり、大きな金額の融資も受けやすくなるということです。
逆に、担保価値の低い不動産であれば、融資可能金額も低くなります。したがって、事業者向け不動産担保ローンにおいては、不動産の担保価値が非常に重要なポイントなのです。
融資する側は事業者向け不動産担保ローンの審査では、対象不動産の調査を実施します。同時に、不動産鑑定士による鑑定評価が行われることもあり、この際の調査結果が貸付を判断する一つの材料になります。
また、不動産を担保とする場合に重要なポイントが、「抵当権」です。抵当権とは、所有者が返済不能などの状態に陥ってしまった場合に、「他者よりも優先して弁済を受ける権利」のことです。
例えば、物件購入時に銀行融資を利用した場合は、お金を貸付けた銀行の抵当権が設定されます。そうすることで、万が一の際に担保不動産を売却し、物件購入費用の返済に充てることができるのです。
抵当権には順位があり、順番の早い者から弁済を受けることができます。すなわち、第一抵当と第二抵当では貸付する側のリスクが大きく変わってしまうため、事業者向け不動産担保ローンの融資可能額も変化することになります。
もちろん、事業者向け不動産担保ローンを利用する際も抵当権が設定されます。利用する事業者向け不動産担保ローンによっては、「第一抵当のみ」「第二抵当まで可」などの融資条件が設けられている場合がありますので、既存の抵当権もチェックしておきましょう。
2.信用情報
事業者向け不動産担保ローンの審査では、「信用情報」の照会が行われるケースが多くあります。信用情報とは、信用情報機関が保有する、契約内容や返済状況、融資金額などの「信用に関わる情報」のことを指します。事業者の信用情報をチェックすることで、誠実に返済を行っているかどうかを判断します。
したがって、融資を受けている件数が多すぎたり、信用情報に問題があると判断された場合は、事業者向け不動産担保ローンの審査に落ちる可能性が高くなります。
信用情報は、各信用情報機関の公式ホームページで開示申請を行うことができますので、事業者向け不動産担保ローンを申し込みする前にチェックしておくのも一つの手段でしょう。
3.売上や資金繰りと借入のバランス
事業者向け不動産担保ローンの審査では、売上と借入のバランスが重視されます。なぜかというと、借入過多になっている事業者に追加で貸付けた場合、返済不能に陥ってしまうリスクがあるからです。
事業者が返済不能に陥ると、不動産担保ローン会社も貸付けたお金を回収できない可能性がありますから、審査面においても売上と借入のバランスが重視されます。
また、売上だけでなく、資金繰りを確認するケースも多くあります。現金化が遅れる売上であったり、キャッシュアウトを伴わない費用などを考慮に入れることで、より精緻な返済原資を推定することができるようになります。
4.事業の安定性
事業者向け不動産担保ローンの審査において、事業の安定性は非常に重要な要素です。なぜかというと、一見高い売上になっていても、それが一時的な要因によるものであれば、事業者向け不動産担保ローンの貸付リスクが大きくなってしまうためです。
では、事業者向け不動産担保ローンの審査において、どうやって事業の安定性を判断するのかというと、「営業年数」「事業規模」「事業内容」「過去の決算」などの項目を総合的にチェックすることになります。
例えば、売上1億円で営業年数6ヶ月のケースと、売上7,000万円で営業年数5年のケースでは、後者のほうが事業の安定性があると判断されることが予想されます。
また、事業規模の大きな法人や、決算内容の良い企業などは事業の安定性が高いと判断されやすくなるため、事業者向け不動産担保ローンの審査でも、良い結果に繋がる可能性が高くなります。
このように事業者向け不動産担保ローンの審査では、複数の項目を総合的に判断されることになるのです。
不動産担保ローンを利用する上での注意点
事業者向け不動産担保ローンは非常に利用価値の高い商品ですが、当然ながら注意すべき点もあります。事業者向け不動産担保ローンを利用する上で特に注意すべき点は以下のとおりです。
1.担保余力
2.利息以外のコスト
3.不動産売却リスク
1.担保余力
先述したように不動産の担保価値は、事業者向け不動産担保ローンの審査時にも調査が行われます。例えば、調査の結果3,000万円の鑑定評価額となったと仮定した場合、1,800~2,400万円程度の借入が可能となるケースが多いです。
しかしながら、これは「第一抵当」の場合です。もし、既に他社の融資などで第一抵当が設定されていた場合、担保余力が変わってしまうのです。担保余力が変わってしまえば、事業者向け不動産担保ローンで借入できる金額も変化することになります。
したがって、事業者向け不動産担保ローンを利用する際には、不動産に設定されている抵当権をあらかじめチェックしておく必要があるでしょう。
2.利息以外のコスト
事業者向け不動産担保ローンでは、利息以外にも発生するコストがあります。これらのコストは利用する商品によっても異なりますが、一般的なものでいえば、
・不動産鑑定費用
・事務手数料
・印紙代
などがあります。つまり、利息以外のコストだけで、大きな金額が必要になる場合もあるということです。事業者向け不動産担保ローンの利用を検討している場合は、必ず覚えておきましょう。
3.不動産売却リスク
不動産を担保にするということはすなわち、万が一返済不能に陥ってしまった場合に、返済原資として不動産を売却しなければならないリスクがあるということです。
もちろん、定められたとおりに返済を行っていればこのような事態に陥ることはありませんが、事業者向け不動産担保ローンを利用するリスクとして把握しておく必要があります。
このように、事業者向け不動産担保ローンには、必ず押さえておくべき注意点も存在します。事業者向け不動産担保ローンの審査を受ける前に必ずチェックしておきましょう。
事業者向け不動産担保ローン審査のまとめ
事業者向け不動産担保ローンの審査は扱う金額が大きくなる分、融資実行までにも時間を要します。また、発生する利息以外にも、様々な費用が必要となる場合があります。
事業者向け不動産担保ローンを検討する際は、
・担保余力に対してどの程度まで融資を受けられるか
・融資を受けるために必要な諸経費
・実際に融資を受けられるまでに要する時間
などのポイントを併せてチェックし、生じるリスクに備えつつ借入を行いましょう。借入と返済のバランスに注意しつつ、計画的に活用してください。
担保価値を徹底的に考慮した審査基準の不動産担保ローン
特にノンバンク系の事業者向け不動産担保ローンの審査は、営業年数、事業規模、事業内容、過去の決算等だけでなく、担保価値を徹底的に分析します。
例えば、通常、金融機関が一定の難色を示す可能性のある新築で空室率100%の状態や収益が発生していない状態でも融資が下りるケースがあります。
通常の不動産であっても、多くの金融機関で行われる担保評価は保守的すぎることがしばしばあります。ノンバンク系の担保評価はマーケットでの実際の取引価格を重視した価格審査をするため、金融機関以上の融資が下りるケースもあり、二番抵当での融資にも対応しているところも多くあります。
0 件