前回は、土地にはそれぞれ都市計画法で定められた「用途地域」があり、所有者は建築物の用途について様々なルールを守る必要があることについてご説明しました。今回は、「用途地域」に続いて「日影規制」(読み方は「ひかげきせい」、または「にちえいきせい」と読みます)についてまとめてみます。
日影規制とは
「日影規制」は、住宅地における日照を確保するために、1976年(昭和51年)の建築基準法改正により定められました。その趣旨としては、中高層建築物であるマンション等を建築する際に、その周囲の住宅が日影になる時間の長さを制限することにより、日照条件の悪化を防ぐことを目的としております。
日影規制は全国どこでも同じではありません
下図は、横浜市における日影規制に関する規制一覧です。日影規制の規制内容は全国一律ではなく、地方公共団体が建築基準法の内容に沿ってそれぞれ作成しております。
この表の見方について、第1種低層住居専用地域(低層住宅の良好な住環境を守るための地域)における規制内容について説明を加えてみます。
日影規制の表現(3時間・2時間・1.5m)
第1種低層住居専用地域の規制は、上の表から一般的に、「3時間・2時間・1.5m」と表現されます。それぞれの具体的な意味については、以下のとおりです。
3時間: 敷地境界から5~10mの範囲の隣地において、(予定)建築物の影が日中の一定時間帯において3時間以上になるような建物は建築できません。
2時間: 敷地境界から10m以上の範囲の隣地において、(予定)建築物の影が日中の一定時間帯において2時間以上になるような建物は建築できません。
1.5m: 上記において影ができる時間を測定する平面は、地面から1.5mの高さで計測します。
つまり、建物を建築する際には、隣接する敷地にできる影の時間をある一定の時間以内に抑える必要があります。また、表の中に「制限を受ける建築物」について規定があり、第1種低層住居専用地域では、「軒高7m以上か、3階以上の建物」について日影規制の適用があります。
日影規制の計算はCADシステムを利用
日影規制をクリアできているかどうかを人の手によって確認することは至難の技です。現在では、CADシステム(Computer Aided Designの略)を利用してコンピューター上で設計します。
建築予定の建物にいろいろと変化を加え計算させ、日影規制をクリアし、かつ最も施主の要望に叶う建物を設計する作業をシステム上で行っています。
住宅を購入する際の留意点
日影規制は、あくまでも「日影になる時間の上限」を示しており、「常に日照が確保されている」わけではないことに留意する必要があります。先ほどの例ですと、隣地から5mライン上では、最大3時間は日中日影になる可能性があるということです。
さらに、日影規制の対象になるのは「軒高7m以上か、3階以上の建物」となっており、2階部分が日影を作ることに関しては規制がありません。すなわち、下図のように、日中ずっと日影になってしまう部分ができる可能性もあるわけです。
日影規制は冒頭に述べたとおり、その規制の目的は日照を確保するためですが、内容は「日影を一定時間内に抑える」ことを定めているにとどまります。したがって、住宅を建築する、また購入しようとする場合には、自分の家が日影規制をクリアしているかの確認は当然ですが、日照に影響を及ぼす可能性がある周辺敷地(特に南側の敷地)に、将来的にどのような建物が建築される可能性があるのかを検討し、自分の家の状況をよく検討することが重要です。
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