J-REITによって、上場株式市場と不動産市場が結ばれることになりました。投資家にもたらされた最大のメリットの一つは、市場を通じて、(よほどの巨額でない限り)買いたいときに買えて、売りたいときに売れるという流動性です。
一方、J-REITには上場しているという特性・設計に由来するデメリットもあります。それはJ-REITとして、「不動産を買いたい時に買えるのか?」という問題です。
J-REITには物件を購入する際、その資金源を確保する方法として次の三つがあります。
(1)内部留保
(2)借り入れ(債券の発行、銀行借り入れ)
(3)増資(主に公募増資)
J-REITはほぼ全て、法人税の課税対象となることを避けるため、(1)の内部留保は通常行っておりません。また、運用上(2)の借り入れを行うのにも限度があります。それは、借り入れを資産全体の一定程度とするという運用方針を明示的あるいは暗黙的に掲げているJ-REITが多く、どんどん借り入れを行うことが出来るというものではありません。
すると、物件(特にある程度大きな不動産物件)を購入しようとする際にJ-REITは(3)の増資を行うことが一般的です。
株式市場に資金が潤沢にある際には増資も滞りなく行われる可能性が高いですが、株式市場が冷え込んでいる際の増資は困難を極めます。また、増資の見込みが立っても、条件が厳しくなることも十分ありえます。すると、せっかくの購入のチャンスを逸してしまうことにつながりかねません。
実質的な資金調達先が市場に限定されることは、それはそれでJ-REITの内包するデメリットとなっています。
J-REIT以外の不動産投資事業者の資金調達先はもう少し柔軟性があります。不動産を自社で持つ会社であれば、増資に加え、内部留保の活用やJ-REITよりも柔軟な借り入れの活用(銀行借り入れ・社債の発行に関し、資産残高の何%まで借り入れることが出来るというあらかじめ決められた水準がないケースも多いです。)が可能です。また、ファンドであれば、最終的な投資家に事前に定められた契約に従い、投資資本拠出を要請(キャピタルコールといいます。)することが可能です。
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