「不動産売買仲介」と呼ばれる会社・個人と付き合わずに、不動産投資を行うことは不可能であるといっても過言ではないかもしれません。
売買仲介は、不動産の売り手と買い手の間に立ち、売買の実行を実現させる役割を担っています。
さて、この説明だけですと、「なぜ仲介は必要なのだろうか?そもそも、売買の実行を実現させるのに売り手と買い手の間に立つ人がなぜ必要なのだろうか?」といった、仲介の存在意義にかかる疑問が沸き起こってきます。
「不動産取引は複雑で、当事者に不慣れな部分もあるので、専門家が間に入って…」という説明を聞くことがありますが、不動産投資のプロと呼ばれる投資家も仲介を通じて売買を行っている点をうまく説明できているとはいえないかもしれません。
結論から先に書くと、仲介の最大の存在意義は契約の相手方を見つけてくるということにあると思われます。
仲介の存在意義を明らかにするために、仲介のない他の投資マーケットを見てみましょう。
ディーラー市場(例:債券市場)
いきなり難しい単語で申し訳ありませんが、投資マーケットの中には、ディーラーと呼ばれる人たちが取り仕切っている市場があり、ディーラー市場と呼ばれています。
最たる例が、債券市場です。そこでは、債券を買いたい投資家はディーラー(証券会社のケースが多い。)から買い、売りたいときもディーラーに売ります。投資家はディーラー同士を競わせることで、最もよい条件を引き出そうとします。売買の当事者は、投資家とディーラーであり、仲介は存在しません。ディーラーの務めは、売買を繰り返すことで、売買益を積み上げていくことです。よって、流動性が極端に低いものについては、ディーラーは取引を通常行いません。多少であれば、価格が下がってでも売却できるものでないと、不良在庫を抱えるリスクがあります。不良在庫が増えてしまうと、ディーラー業務に制約が出てしまいます。投資対象とはいえなくなってしまうかもしれませんが、中古車ディーラーも同様のマーケットといえそうです。
オーダー市場(例:株式市場)
これまた難しい単語で申し訳ありませんが、オーダー市場と呼ばれるマーケットがあります。証券会社も介在をするので厳密には異なりますが、証券取引所での株の取引をイメージするとわかりやすいと思います。
売りたい人が、売りたいものの値段や条件を提示し(指値、成り行き等)、買いたい人が買いたいものの値段や条件を提示し、合致したら取引が成立するマーケットをオーダー市場といいます。常に、潜在的な買い手と売り手がいる環境でないと、そもそもとして、このようなマーケットは成立しません。つまり、オーダー市場も、ディーラー市場同様、一定の流動性のある投資対象でないと成り立ちません。
仲介はなぜ必要か?
ディーラー市場もオーダー市場もある程度の流動性のある商品でないと成り立たないことがわかります。不動産投資で対象となる不動産は、国債や上場株式に比べると、大きく流動性が劣ります。平たくいうと、潜在的な買い手や売り手がどこにいるのか、投資家はわかっていません。これはつまり、不動産投資のディーラー市場やオーダー市場を作ることが難しいことを意味します。オーダー市場では、顔は見えなくとも取引の相手方は常にいることが想起されますし、ディーラー市場では常にディーラーが取引相手となってくれる可能性があります。しかし、不動産投資においては潜在的な買い手や売り手はどこにいるのかわかりませんし、常に売買の相手となってくれるディーラーもいません。
つまり、売却活動や購入活動は相手方を見つけることから始めなければなりません。しかし、通常の不動産投資家は毎日売買を行っているわけではなく、売買市場の状況に関して、常に完全な情報を有しているわけではありません(自力で最も有利な契約相手方を見つけることは困難です。)。かくして、仲介に業務を依頼することになります。
この取引相手を見つけるという極めて重要な役割に加え、日本における不動産売買仲介は、契約条件の折衝業務、鍵の確認、重要事項の説明等、多岐にわたる業務を行っています。実際に行われている個別の業務については後日の記事にて紹介をしていきたいと思います。
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