どの業界にもその業界特有で多少のユーモアのある用語があるものです。今回の用語は不動産業界の用語の中でも「なるほど!」と思われるものではないでしょうか。
一般に不動産売買仲介は「売主」と「買主」を結びつける業務、つまり不動産の売り手と買い手の間に立ち、売買の実行を実現させる役割を担っています。その際に、売主から売却の依頼を受けた仲介と買主から購入の依頼を受けた仲介の間に別の仲介が存在する時、それぞれの仲介の中間にいる仲介業者のことを「あんこ(あんこ業者)」ということがあります。
イメージが湧きにくいかもしれませんので、下図を使って説明しますと、保有不動産を売却したいオーナーが、「OwnersBook不動産仲介」に売却の依頼をしたところ、そのような不動産を買いたい人(買主)を知っている仲介を見つけてきた「ファンディング仲介」を通して売買が成立するようなケースがあり、この場合の「ファンディング仲介」が「あんこ(あんこ業者)」となります。
これは売却の依頼を受けている仲介と購入の依頼を受けている仲介の間にいる仲介業者の状態が、あたかも饅頭のあんこのように見える(ドラ焼きのあんこという説もあります。)ことからそう呼ばれているそうです。これだけでは、「なるほど!」は終わりません。仲介業者がいくつか連なっている様子が「あんこが詰まっている」という表現とぴったりなのです。
(ただし、発音は、「あ」にアクセントがつくお菓子とは異なり、「こ」にアクセントがつきます(東京の場合。)。)
あんこ業者が存在する経緯としては、インターネットが発達する以前には、仲介の売買物件の情報のやり取りは電話(後にファックスも加わりました。)が中心で、業界内で情報の共有が十分ではありませんでした。一般に仲介の最大の仕事は売買の相手方を見つけてくるということです。そこで、売主から売却の依頼を受けた仲介が付き合いのある別の仲介業者へ情報を提供し、さらにその業者が別の業者へ情報を提供するなどして、最終的な売買につながるといったケースも多々あったそうです。
昨今では、インターネットの普及により情報の共有が進み、あんこ業者が介在する契約は減っているといわれていますが、取引において情報が広く出回ってしまうことを望まないような売主もいるので、依然としてあんこ業者が関与することもあるようです。
0 件