不動産投資で利益を得るためには、事前に収支をしっかりと計算しておくことが重要です。また、その物件に賃貸需要があるかどうかや、いわゆる「訳あり物件」でないかどうか等も調べておく必要があります。
このため、投資用物件を検討するにあたっては、いくつかの必要書類を売主に請求し、具体的なデータを基に判断することが欠かせません。
今回は、投資用物件の検討にあたって必要な書類やそのチェックポイントについて、住宅への投資を例にとり、紹介します。
物件概要書
物件の基礎情報が記載されている物件概要書(業界では「ペライチ」と呼ぶ人もいます。)は、その物件を知るうえで最も基本的な書類となります。物件概要書では、土地や建物の面積、駅からの距離、用途地域、間取り等を重点的に確認しましょう。万が一これらについて記載がない場合には問い合わせてみましょう。
特に、駅距離や部屋の面積・間取りは入居者の物件選びの基準として非常に重要なものであり、賃貸需要を左右する大きな要素となります。
駅からの距離
一般的に駅から近い方が需要も高いといえるでしょう。特に都心部では駅から近い=利便性が高い、と認識されることが多いです。
なお、物件から最寄駅までの距離が近くても、主要駅までのアクセスの良し悪しで不動産価値や入居希望者の数が大きく変わる可能性があります。最寄駅からの距離とあわせて主要駅までのアクセスについても注意するようにしましょう。
部屋の間取り
間取り図から、住みやすそうか否かを確認します。
無駄なスペースがないか、バス/トイレ別か、といったことや、部屋の向き(日本では、一般的には南向き住戸の人気が高いです。)等が判断基準として有力です。
登記簿
登記簿には、物件の所在地や所有者、権利関係等が記載されています。登記簿では、対象の物件に差し押さえや仮登記、抵当権等他の権利が発生していないかを確認するようにしましょう。
他の権利が発生している場合、思わぬ債務を負ってしまう可能性もありますので、慎重に検討する方が良いでしょう。
レントロール
レントロールは、物件の賃貸借状況を示す一覧表のことをいいます。レントロールからは、各部屋の面積、契約期間、賃料、敷金・礼金、入居者の氏名・法人名(開示されていないケースもあります。)等が分かります。契約の開始日と満了日、入居者の属性(学生、社会人等)、家賃滞納の有無等が記載されている場合もあります。
賃料
レントロールからは様々な状況が分かりますが、利回りの計算に欠かせない実際の家賃収入の状況が分かるという点が大きな特徴です。
各部屋の賃料は、気になっている物件にとどまらず、その周辺の同程度のクラスの物件と比較して、妥当かどうかを判断する必要があります。
空室状況
レントロールでは、空室状況も一目でわかるので、こちらも把握しておくようにしましょう。空室が長らく続いているのであれば、賃料設定の見直しが必要となる場合もあります。
ただし、引っ越しが多くなる2月から4月にかけての時期の空室状況を見るのは、データを読み取るうえで参考にはなりにくい場合もあるので注意しましょう。
入居者属性
入居者の属性の中には具体的な大学名や会社名が記載されているものもあり、貴重なデータとして利用できます。例えば、大学生が多く借りている物件の場合、4年より長くはその部屋に入居しない可能性が高く、一定の入れ替わりがある物件であることが予想されます。
修繕費用が減る点や安定した収入が得られる点等から、入れ替わりの少ない物件の方が魅力的だと考えるのであれば、学生の入居の少ない物件を選ぶという選択肢も考えられます。
収支明細
物件によっては、インターネット費用や光熱費等をオーナーが全額出したうえで、入居者に個々に請求するというシステムを取っているところもあり、そうした仕組みは収支明細を読むことによって明らかになります。
また、物件を購入した後の支出は、通常収支明細に記載されている内容とほとんど変わらないと考えられるので、収支明細の額は利回りを計算するうえでとても参考になります。
固定資産関係証明
固定資産関係証明は、固定資産税や都市計画税、不動産の評価額等が記載されている書類です。不動産投資にあたって見逃せない支出の一つが税金であり、物件を購入・維持するために必要な経費を計算するためにも、これらの情報は欠かせません。
地図
地図は、オーナーも入居希望者も見る重要な資料です。駅や役所、スーパーマーケットから近いかどうかという点に関しては多くの方が確認する点かと思いますが、地図からはさらに有益な情報が得られることもあります。最近ではインターネットで、ある程度確認をすることもできるようになっています。
物件周囲の状況
例えば、大きな研究所は地盤が安定している土地に建てられることが多くなっています。研究所が近くにある土地は、地盤が安定している可能性が高いといえるかもしれません。
また、道路が直線的に整っている地区は、住宅のために区画整理されたという背景があり得るので、政府や自治体が開発に力を入れている地域と解釈することもできそうです。
検査済証
検査済証は、工事完了検査に合格した物件に対して交付される書類です。建築工事が完了した一定の建物は工事完了検査を受けることが義務付けられています。中古物件や既に建築された建物の場合には、この合格を証明する検査済証が存在するのが望ましいですが、検査済証が「現在、ない。(交付を受けなかった、過去に紛失をした等)」という場合もあります。
金融機関が融資の可否を判断するにあたり検査済証を求める場合があること、「検査済証のない物件を購入しない。」と決めている投資家もいることから、検査済証の有無が売買価格に影響を与えてしまうケースがあります。検査済証がない案件を検討する場合、ないことに伴うリスクが十分に価格に織り込まれているかも検討しましょう。
まとめ
不動産投資は、直感的に良いと感じた物件に投資するだけではうまくいきません。事前にきちんと情報を分析して、利益を得られる見込みのある物件を選ぶことが大切になってきます。不動産投資の最初の一歩を踏み間違えないように、データとして活用できる書類はできるだけ揃えたうえで、投資すべき物件について検討するようにしましょう。
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