引き続き、投資判断において陥りがちな判断ミスについて考察します。今回の記事で3回目ですが、いずれも難しいことを述べているわけではなく、社会心理学で説明される人間の行動が、経済行動においてどのような影響を与えるのかを考察しているため、言われてみると納得感があるのではないかと思います。
今回は代表性バイアス(Representativeness Bias)についてです。代表性バイアスとは、一度「あるべき姿」を思い描いてしまうと、新たな情報がもたらされた後にも、その「あるべき姿」から逃れられなくなってしまう現象です。
物事に「あるべき姿」を割り当てる行為のひとつに「分類」があります。情報を分類した際には、このバイアスに囚われないよう気をつける必要があります。
株式投資における代表性バイアスの例には、一度「成長株」と分類した株に投資をした後、新たな情報が加わり、一般的には成長株と判断されない状態になっても、成長株との分類を継続してしまうようなケースがあります。
不動産投資においても、一度分類をした後、時の移り変わりでその分類に当てはまらなくなるケースは多くあります。例えば、かつての歓楽街が、最新鋭のオフィス街になっているようなケースでは、その地名を言われて、「ああ、歓楽街ね。オフィス街ではないのでそこのオフィスビルは買いません。」となると、せっかくの投資機会を逃してしまうかもしれません。
そのほかにも、投資不動産の機能的な側面で「あるべき姿」に囚われてしまうかもしれません。例えば、オフィスの床には、コード(デスクへの電話や電話機器などの配線・LANケーブルなど)を這わせるために床の下にスペースがあるケースが多くあります(「OA床」「OAフロア」などと呼ばれています。)。この床下スペースは導入された当初はある程度スペース(床高)があるのがよいとされたものですが、最近はワイヤレス化・事務所内でのフリーアドレス化(決められた席のない働き方)などによって、企業によっては以前ほど床下スペースが必要ではなくなりつつあるようです。よって、「OA床のスペース(床高)が小さい=その分競争力が劣る物件」と断定できなくなりつつあるようです。
代表性バイアスの回避は非常に難しいです。物事を理解したり、説明する際に、単純化する(≒「あるべき姿」を思い描く)ということを避けて通れないからです。しかしバイアスを避けるため、投資判断をする際には、「その判断基準は最新のものなのか?」、「なぜ、そのように判断を行うのか?」ということを突き詰めて考える習慣が必要かもしれません。また、いろいろな人からいろいろな意見をもらうことは、新しい情報を代表性バイアスに囚われないように扱える効果があるようです。
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