経済活動は人間が行うものである以上、参加者である人間の感情に影響を受けてしまう部分があります。近年、それについては行動経済学という形で研究が進んでいます。「行動経済学」という熟語を目にしてしまうと、一件難しいもののように感じられますが、紐解いてみると誰もが「ああ、そうだよね。」と納得の出来るものも多かったりします。
ここでは、いくつかのシリーズ記事として、個人投資家が意思決定をする際、どのようなことを気にしながら、投資判断を行っていくべきなのかを検討したいと思います。
保守性バイアス(Conservatism Bias)とは
保守性バイアスとは、簡単にいうと、ある見解や予想に固執することです。投資家は多くの場合、投資実行を行う前にその検証を行います。しかし、保守性バイアスに囚われてしまうと、分析の結論を出した後に新たな情報が入ってきても、一度行った分析の結果を変更しなかったり、その情報に対する検証が遅くなってしまいます。例えば、次のようなケースを考えてみます。
J-REITに投資を行うために、週末をかけて真剣に個別銘柄の分析を行い、最も投資をしたいものを見つけたとします。そして、月曜日の証券取引所の開始に向けて、指値で注文を入れます。しかし、月曜の朝、朝刊を見ると不動産市場に影響を与えかねない、政策の変更の可能性に関する記事を目にしました。
このとき、保守性バイアスに囚われてしまうと、ついつい新しい情報(ここでは政策の変更の可能性)を重視しないこととなり、注文のキャンセルをしたり、再度分析をしたりといった行動に移らなくなってしまいます。
保守性バイアスに囚われないようにする上で、一番大切なことは、「そのような状態に陥っているかもしれない。」と自分の状況を客観的に見ることです。上の例でいけば、一旦注文をキャンセルして、自分を落ち着かせてから、投資判断を再度構築するという方法もありそうです。
また、保守性バイアスにおいて、特に気をつけなければならないのは、分析に費やした労力が大きければ大きいほど、保守性バイアスに陥りやすいということです。確かに、膨大な分析を行った後に、新たな情報が入ってきた際、「勘弁してくれよ!」と思いたい気持ちはよくわかります。しかし、そこで立ち止まらず、突っ走ってしまい、大きな後悔をしないよう、深呼吸をして新しい情報の持つ意味をよく見てみる必要があります。
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