先月、日本中で話題になったニュースの一つに、免震用のゴムの話がありました。今回は地震対策でよく話題になる『耐震』・『制震』・『免震』の三つについてその特徴等をまとめてみました。
◯ 耐震、制震、免震の順に発展
前回の記事(不動産投資の基本(18)~耐震基準~をご参照ください。)でお話しした新耐震基準が制定された頃は、「建物の強度をあげて地震による災害を免れる」という発想が中心となっていました。この考えを『耐震』といい、コンクリートや壁の強度を高めることが特徴で、台風等でも揺れない建物を作ることを主眼にしていました。
耐震ビルは安価にできるというコスト的なメリットもありましたが、地震のときに建物全体が大きく揺れるという問題点がありました。1995年の阪神大震災後は、そういったデメリットを解消するために『制震』機能をもったマンションやビルが急速に増えました。
制震ビルは、地震による揺れを吸収する部材を取り付けることにより高層ビル上層階の振動を抑えたもので、台風等の強風時にも揺れを抑えてくれます。ただし、地面に接した低層階は直接地震による揺れを受ける構造となっていました。
制震ビルの問題点である、低層階への揺れの軽減も可能で、かつ建物全体も地震による揺れから守ることを目的としてできたシステムが『免震』です。免震は、建物と地面を免震装置で切り離すことで、揺れそのものを建物に伝えない仕組みをとっています。
【耐震・制震・免震の特徴等】
2015年5月1日付日本経済新聞朝刊より引用
◯ 最近できた免震ビルが一番安心?
では、「最も新しい技術でできた免震ビルが一番安心なのか」という問いに対する答えは、必ずしもYesではありません。場合によっては制震ビルの方が優れている点もあります。これはそれぞれの特徴に起因しており簡単には説明ができませんが、免震ビルでも揺れが長期化することにより建物への損傷が耐震ビルや制震ビルよりも大きくなる可能性があることも指摘されています。また、免震技術の歴史が浅いために、先日起こったような免震ゴムの性能不足問題が発生することもありえますし、免震ビルは築年が経っても当初の性能を維持できているのかどうかについて定期的なメンテナンスや点検も必要となり、多額のコストがかかるのが通常です。
普段の生活においても制震ビルと免震ビルでは揺れ方が異なってくる場合があります。多少の風等では制震ビルは揺れることはないですが、免震ビルの方は、人によっては頻繁にビルが動いていると感じてしまうため住み心地が悪いと感じられる場合もあります。
一般的には最新の技術である免震ビルが優れているといわれていますが、どのような技術にも一長一短はあるということですね。
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