事業を営む方にとって、運転資金や設備投資資金の確保は悩ましい問題です。そのようなケースで有力な手段になるのが、金融機関が事業を営む方を対象に提供している「事業者向け不動産担保ローン」です。
事業者向け不動産担保ローンは不動産を担保にすることで、大きな金額を有利な金利で借入することができます。しかしながら、いざ「不動産担保ローンを利用しよう!」と決意したとしても、1つ押さえておくべき重要なポイントがあります。
それが、事業者向け不動産担保ローンの「必要書類」です。事業者向け不動産担保ローンの利用時には、どのような書類が必要になるのでしょうか。今回は、事業者向け不動産担保ローンの必要書類について、わかりやすく解説します。
事業者向け不動産担保ローンの必要書類とは
事業者向け不動産担保ローンの必要書類は、融資実行の可否を判断するための審査で利用されます。事業者向け不動産担保ローンの一般的な必要書類は下記のとおりです。
なお、以下では、事業者が法人の場合を例にご説明します。個人事業主を対象とした「事業者向け不動産担保ローン」では法人に関する証明書類(商業登記簿謄本、決算書、印鑑証明書)に代えて、個人に関する証明書類(住民票、確定申告書、印鑑証明書)が必要書類に含まれるのが一般的です。
1.法人格を証明するための書類
2.印鑑証明書
3.決算書
4.不動産関係書類
事業者向け不動産担保ローンでは、
・不動産に関する審査
という2つのポイントで審査が行われます。したがって、当事者(法人・個人)に関する審査のみの自動車ローンやクレジットカードなどの利用よりも必要書類が多くなりますので、あらかじめ注意しておきましょう。
では、具体的な必要書類とその準備方法を解説していきます。
事業者向け不動産担保ローンの必要書類
事業者向け不動産担保ローンを利用する際の具体的な必要書類は、下記のとおりです。
事業者向け不動産担保ローンの具体的な必要書類
①商業登記簿謄本(1部 3ヶ月以内のもの)
②決算書3期分(設立から3期未経過の場合は、設立後の決算書)
③印鑑証明書(1部 3ヶ月以内のもの)
【不動産関連】
①不動産鑑定評価書
②法務局備付資料(不動産登記簿謄本、公図、建物図面等)
不動産鑑定評価書がない場合は、以下の追加資料が必要です。
・担保不動産を特定できる資料
・貸借条件一覧表(レントロール)
・建物管理費に関する資料
・保険金額に関する資料
・固定資産税及び都市計画税に関する資料(納税通知書の写し等)
事業者向け不動産担保ローンの必要書類を用意する際のポイントは、「商業登記簿謄本」「不動産登記簿謄本」「公図」「建物図面」の4つでしょう。これらの書類は日常的に目にすることがないため、準備に戸惑ってしまう方も多いと思います。それぞれの入手方法をご説明します。
商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本
商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本は、管轄の法務局で入手することができます。ただし、わざわざ窓口に出向くと手間がかかってしまうので、必要に応じて「オンライン請求」を利用しましょう。
オンライン請求とは、インターネット上で交付を請求し、郵送または窓口で書類を受け取る手続きのことです。オンライン請求を利用すれば、自宅で簡単に商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本を請求することができます。手数料は、郵送の場合で1通500円、最寄りの法務局で受け取る場合で1通480円となります。
公図、建物図面
公図とは建物や道路の単位ごとに書かれた通常の地図と異なり、土地の単位ごとに書かれた特別な地図のことです。建物図面は、建物の構造を表す設計図です。公図と建物図面は、商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本と同様法務局で入手することができます。
ちなみに、公図と建物図面もオンライン請求に対応していますので、商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本と併せて申請すると良いでしょう。手数料は、郵送の場合で1通450円、窓口で受け取る場合で1通430円となります。
事業者向け不動産担保ローンを利用する際は、上記の書類が必要になります。ただし、上記書類は審査の状況によっては異なる場合があります。あらかじめご注意ください。
個人が所有する物件を担保とする物上保証も可能
事業者向け不動産担保ローンを法人に融資する場合、物上保証として個人の所有不動産を担保にすることが可能です。その場合の必要書類は、上記のケースと少し異なります。具体的には下記の書類が必要となります。
①商業登記簿謄本もしくは履歴全部事項証明書(1部 3ヶ月以内のもの)
②決算書3期分(設立から3期未経過の場合は、設立後の決算書)
③印鑑証明書(1部 3ヶ月以内のもの)
④通帳の写し
【不動産関連】
①不動産鑑定評価書
②法務局備付資料(不動産登記簿謄本、公図、建物図面等)
不動産鑑定評価書がない場合は、以下の追加資料が必要です。
・担保不動産を特定できる資料
・収支実績表
・貸借条件一覧表(レントロール)
・建物管理費に関する資料
・保険金額に関する資料
・固定資産税及び都市計画税に関する資料(納税通知書の写し等)
【物上保証人関連】
①本人確認書類
②納税証明書(所得税)
③住民票
④印鑑証明書
物上保証の場合の必要書類として、物上保証人の所得証明書は不要です。ただし、納税証明書の提出が必須となっている点に注意が必要です。
納税証明書の提出がなぜ必要なのかというと、法律上、登記されている抵当権に対し、国税等の租税債権が優先することになっているからです。つまりわかりやすくいうと、税金の滞納があるとその分抵当権の価値が低くなることになります。
このような背景から、事業者向け不動産担保ローンで個人保有不動産を物上保証とする場合は、納税証明書の提出が必要となります。また、貸付期間中に納税タイミングが来た場合は、納税証明書の再提出が必要となりますのであらかじめご注意ください。
事業者向け不動産担保ローンの必要書類を揃える上での注意点
事業者向け不動産担保ローンの必要書類は多く、審査の状況によっても異なる場合があります。その際に注意すべき点が、「書類の用意にかかる日数」です。
事業者向け不動産担保ローンの必要書類の中には、準備に時間がかかるものもあります。もちろん、直接法務局に出向いて書類を揃えられるのであれば時間を要しませんが、オンライン請求や郵送で申請した場合は、どうしても日数がかかってしまいます。
用意に時間を要すれば要するほど、融資を受けられるまでの日数が長くなってしまうため、お急ぎの方は書類の用意にかかる時間を想定し、できる限り早めに準備を開始するようにしましょう。
また、不動産鑑定評価書がない場合、別途資料が必要となります。しかしながら、手続きを進める上では、不動産鑑定評価書を用意したほうがよりスムーズに申込できる可能性があります。
不動産鑑定評価書は、不動産鑑定会社に作成を依頼することで用意できますので、事業者向け不動産担保ローンを検討中の方は併せて確認しておきましょう。
まとめ
事業者向け不動産担保ローンの必要書類は他のローンより多く、「揃えるのがめんどくさい…」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。また、日常的に目にすることのない書類が多く、戸惑ってしまう場合もあるでしょう。
しかしながら、書類の準備は法務局で入手可能なものが多いため、大きな手間を要するケースは少ないと思います。
この記事のポイントをまとめると、
・登記関係書類の準備は、オンライン請求が便利
・個人保有の不動産を物上保証にすることも可能
・お急ぎの方は郵送の日数に注意した上で、可能であれば法務局で直接手続きを行う
・不動産鑑定評価書を用意したほうが、申込はスムーズ
という4点です、しっかりポイントを押さえ、準備不足のないように注意しましょう。
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