建物の区分所有と一棟所有のメリット・デメリットは?マンション・オフィスそれぞれを解説

実物不動産投資を行い不動産を所有する場合、大きく分けて「区分所有」、「一棟所有」という二つの所有形態があることをご存知でしょうか?また、同じ区分/一棟でもマンションとオフィスでは特徴が異なり、人によって、あるいはその時々によって選ぶべき所有形態は異なります。今回はそれぞれの所有形態にどのようなメリット・デメリットがあるのかなどを解説します。

 

建物の区分所有・一棟所有とは

区分所有とは

建物の区分所有については、区分所有法で詳しく定められています。区分所有法第一条によれば、区分所有の定義は以下のようになっています。

第一条  一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

重要なポイントは二つです。まず、構造上の独立性です。建物のほかの部分と壁などで完全に遮断されているかどうかが判断基準となります。二つ目は、用途の独立性です。建物の各部分がほかの部分から独立して、住居や店舗などの用途を果たしているということです。

しかし、普通に不動産投資を行う場合には、これらのような法律的な定義まで考える必要はないでしょう。単に、「一棟のマンションのうち、一部の部屋を所有すること」と区分所有をとらえても概ね問題ないと思います。

一棟所有とは

一棟所有とは、文字通り建物を一棟丸ごと所有する形態のことです。アパート経営となると多くの場合は一棟所有となりますが、いわゆるタワーマンションなどでは価格や費用などの問題から、一棟所有という形態はとりづらいでしょう。

 

区分所有マンションのメリット・デメリット

区分所有マンションのメリット

区分所有では、一棟所有と比べると購入する際の部屋数が少なくなるため、比較的少ない費用で投資を始めることができます。したがって、普通のサラリーマンでも手が出しやすく、仕事の片手間で少額の不動産投資をするという場合には区分所有が多いようです。

また、少額の費用で投資できるということは、売りに出した時に買える人が多いということに繋がります。実際に売却できるかどうかは、他物件との比較などの様々な要因が関係してきますが、買い手候補が多いという点は魅力的といえます。

購入費用が少額で済むという点は、他にも良い効果をもたらします。自分の持っている資産のうち、比較的少ない割合を投資に充てることになるので、その分だけ損害になりうる金額も低減されます。また、区分所有の場合には一部屋単位での売買が基本となるので、資産に余裕ができたタイミングで一部屋ずつ段階的に投資できるというところもメリットです。これによって異なるエリアの部屋を購入することによりリスクを分散させることも可能になります。

区分所有マンションのデメリット

一方でデメリットもあります。区分所有となると、一棟所有に比べて相対的に所有する部屋数も少なくなります。すなわち、空室の影響が大きくなってしまうという問題があります。20部屋のマンションを一棟所有した場合には、空室一部屋分の影響は5%にとどまりますが、二部屋だけ区分所有しているという場合には、50%にも及んでしまいます。

また、区分所有ではオーナーの思い通りに大規模な修繕を行うことができないというのもデメリットの一つです。建物の大規模修繕を計画するにあたり、区分所有のような建物では管理組合での議決が必要となってくるのです。修繕の内容にもよりますが、一般的な管理規約においては、出席した区分所有者及びその有する議決権のうち過半数の賛成が必要です。すなわち、自分が大規模修繕をしたいと思っていても必ずしもできるわけではなく、自分が思ったように運用ができないリスクもあります。

 

一棟所有マンションのメリット・デメリット

一棟所有マンションのメリット

一棟所有マンションの一番大きなメリットは、老朽化した際の修繕などが行いやすいという点です。区分所有のデメリットで、大規模修繕のためには管理組合の議決が必要であることを説明しましたが、一棟所有ではこのような管理組合などはないため、自分の意志で修繕を行うことができます。

築年数が経過していくと、塗装の剥がれなどによって実際の築年数以上に古いイメージを与えてしまうことがあります。見た目を新しくするという意味でも建物の大規模修繕は重要ですので、修繕のしやすさというのは大きなメリットといえます。

また、一棟所有マンションは空室一部屋当たりの影響が区分所有に比べて少ないというメリットがあります。区分所有の際には、所有部屋数が相対的に少ないことをデメリットとして指摘しました。その裏返しで、一棟所有では空室リスクをある程度分散することができます。

加えて、建物が建っている土地を全て所有できるという点もメリットといえるでしょう。区分所有の場合、土地については全体に対しての専有部分の持ち分割合しか所有することができませんが、一棟所有ではそのようなことはありません。

土地を持っているということは、次の投資を見越した時にとても有利です。金融機関からの融資を受ける際には土地を担保にするケースが多いため、土地の所有は大きな強みになり、融資を受けやすくなることがあります。

一棟所有マンションのデメリット

一方のデメリットについてはまず、必要な資金の額が比較的大きいという点です。一般的に、区分所有に比べて所有する部屋数も多くなってくるので、それだけ投資に必要な金額も多くなります。当然、投資に失敗した場合に被る損害額も多いということになるので、慎重な選択が必要です。

次に、部屋を選んで購入することができないという点です。一般に一つのマンションやアパートの中では、角部屋や高層階の部屋に人気が集中する傾向があります。区分所有であればこれらの人気のある部屋を狙って投資することができますが、一棟所有では不人気な部屋も含めて全部屋を所有することになるので、満室にするためには工夫が必要です。

また、大きな災害があった場合に損害が集中してしまいます。区分所有では、様々な場所の物件を所有することができるため、地震などの災害時におけるリスクを分散させることができますが、一棟所有では損害リスクが高くなります。

 

区分所有オフィスのメリット・デメリット

区分所有オフィスのメリット

区分所有の中でも、住宅ではなくオフィス物件を所有することのメリットは、ハイグレードなビルの物件を取得できるという点にあります。グレードの高いビルであれば、エントランススペースや駐車場などの付帯設備や、非常用発電機、免振構造といった機能なども享受することができうるので、テナントの入居率を高く維持しやすいといえます。

特徴として、一般的に住宅用の物件に比べて賃料設定が高いことが挙げられます。また、景気が良い時には賃料を高く設定してもテナントが入りやすい傾向にあるようです。その反面、景気のアップダウンにより影響されやすいため、景気が悪い場合は空室リスクが高くなってしまうので注意しましょう。

区分所有オフィスのデメリット

一方で、管理費用が多くかかる可能性があるというデメリットもあります。また、区分所有オフィスはそもそも市場に出回る数が少ないという点もデメリットといえるでしょう。

 

準備資金とリスクを鑑みた不動産投資を

それぞれの所有形態における功罪を紹介してきました。以上のことを踏まえると、初心者が投資を始めるにあたっては、少額で始められる区分所有にメリットがありそうともいえますが、一方で最初から一棟所有をして金融機関から信用を得ておくというのも一つの手といえるでしょう。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるので、投資を決断する前にどちらが適しているかを慎重に考え、リスクとリターンを天秤にかける必要があるでしょう。

 

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